【3月18日 AFP】新型コロナウイルスが米国で猛威を振るう中、韓国系米国人のエスター・リム(Esther Lim)さん(32)は両親や自分の暮らしについて不安を募らせていた。健康面だけではない。このところ、アジア系米国人を標的とするヘイトクライム(憎悪犯罪)が増え、自分たち家族もヘイトを受けるのではないかと思うようになったからだ。

 友人がひき逃げでけがをしたとき、リムさんはヘイトによる襲撃だと確信し、行動を起こす決意をした。「びくびくしながら暮らすのではなく、先を見越して自分から何か始めようと思いました」とAFPに語った。

 リムさんは母親に催涙スプレーを買って渡し、父親から柔道を習い、さらに「How to Report a Hate Crime(ヘイトクライムを通報する方法)」と題したパンフレットも作った。警察との対応の仕方や、通りすがりの人に助けを求める英語のフレーズをまとめたものだ。

 すでに6か国語(中国語、日本語、韓国語、スペイン語、タイ語、ベトナム語)で印刷を始め、友人やロサンゼルスのアジア系コミュニティーセンターに配布するという。タガログ語やクメール語などの版も予定している。

 リムさんは、こうした活動はこれまで以上に重要だと実感している。

 米国ではここ数か月、アジア系住民、特に高齢者に対する攻撃が急増。アジア系オーナーの店舗が略奪されたり、住宅や車に差別的な落書きをされたり、路上で襲撃されたアジア系米国人が死に至った事件などが報告されている。標的にされているのはフィリピン、タイ、日本、ラオス、韓国や中国系の人々だ。

 その一因として人権団体が挙げるのが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領らが用いた「中国ウイルス」という呼称だ。

 今月11日の国民向け演説でジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、中国で始まった新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)をめぐり、「責任を負わされ、スケープゴートにされているアジア系米国人に対する悪質なヘイトクライム」を強く非難し、こう述べた。「間違っているし、米国らしくない。やめなければならない」